『プレシャス』を観ました・・・ (´;ω;`) [映画]
『プレシャス』
2009年 アメリカ制作 監督:リー・ダニエルズ
出演:ガボレイ・シディべ、ポーラ・パットン、モニーク、
マライア・キャリー、レニー・クラヴィッツ
この『プレシャス』という作品は、『ジョジョの奇妙な冒険』の作者、
荒木飛呂彦先生の著書、『荒木飛呂彦の奇妙な映画論』で紹介
されていました。(私のブログでも感想を書かせてもらいました)
厳密にはホラー映画の括りではないのですが、荒木先生は、観客
を怖がらせるという意味では、十分ホラーだと解説しています。
映画全般が好きで、ホラー映画も大好きな私ですが、この作品は
全くノーマークだったので、観てみることにしたのです
はい、さくっとあらすじ
1987年のニューヨーク、ハーレム。
16歳の少女クレアリース”プレシャス”ジョーンズは、既に一児の
母で、お腹の中には二番目の子供がいる。
なんと子供の父親は自分の父。
性的虐待の末に生まされた子供だ。
母親からは、いつも罵声を浴びせられ、精神的にも肉体的にも
痛めつけられ、『プレシャス=貴い』という名前とは、かけ離れた
毎日。
出産の為に留年しているプレシャスは、16歳にして中学校に
通っているが、信頼出来る友人も教師もいないし、学校は全く
楽しくない。
そんな中、2度目の妊娠が校長の知るところとなり、学校を退学
させられたプレシャス。
読み書きは苦手だが、数学の成績は良いプレシャスを見かね、
校長は彼女にフリースクールに通うことを勧める。
そこでプレシャスは一人の教師、個性的なクラスメイトたちと出
会い、初めて「学ぶ喜び」「人を愛し、愛される喜び」を知る。
そして苦難の末に、彼女の選んだ道とは・・・。
予告編もどうぞ
では私の感想です。
ネタバレ有りなのでご注意くださいね
確かに、この作品『プレシャス』は怖いです。
衝撃を受けるような怖さもあるのですが、生き地獄の中を静かに
のた打ちまわるような、悪夢の中で逃げ惑うような怖さです。
逃れたいのに逃れられないヒロイン、プレシャスの過酷な日常。
・・・・・・本当に怖いです。
実の父親と母親から、こんな壮絶な虐待を受けて、学校からも
社会からも顧みられないプレシャス。
GDP世界一位の先進国、アメリカの影の部分をプレシャスという
少女を通して観客に訴えかけています。
だからこそ全世界で反響を呼んだ作品です。
もう、これでもか!これでもか!とプレシャスを虐待する母親
プレシャスのこの体型は、母親が無理に食事を摂らせているの
も、影響しているようです。
このプレシャスを演じているのは、ガボレイ・シディべ。
大学で心理学を学びながら、電話オペレーターとして働いている
所を抜擢された、期待の新星
一部の趣味の方々がむしゃぶりつきたくなるような、見事な豊満
バディです ↓
話を本題に戻して・・・・・
プレシャスの父親は別居中で家に居ないのですが、生活費は
一切入れていない。
どうやって生活しているかというと、プレシャスは一人目の子の
児童手当を受給しているので、それのみが頼り。
母親は何だかんだと理由を付けて一切働きません。
しかも受給した手当は、母親が全て横取り。
何とも言えない溜息が出ます
この母親は既に心を病んでいるんでしょうね。
その理由は後々解るのですが・・・・・。
演じているのはモニーク。アメリカでコメディアン、司会者として
活躍中の方です。
モニーク演じる母親が・・・・まあ・・・・怖いのなんの・・・・
実の娘に、ここまでするか!?ってくらいの壮絶な虐待をプレシャ
スに加え続けます。
父親がプレシャスにしていることを知っているのに、この母は助け
もしない。
それどころかプレシャスを、自分の男を盗った泥棒猫だと罵るばか
りです。
・・・・・いやいやいや・・・お母さんこれ、れっきとした性的虐待で、
強姦なんだけど・・・・・・
学校を退学になって、フリースクールに通うとなった時も、この母
親は『勉強なんて無駄だ!』とプレシャスを罵る。
・・・・・もう生物学上だけの母親です。
こんなものは保護者、母親とは言わないでしょう。
毎日が戦々恐々としていて、生き地獄な日々だけど、プレシャスは
何とかフリースクールに通い始めます。
人生の転機です。
このフリースクールでの出会いが、それはもう劇的な程にプレシャ
スを変えて行きます
ポーラ・パットン演じるフリースクールの先生、ミズ・レイン。
このレイン先生の存在感は素晴らしいです
容姿からして知的な美貌に溢れ、魅力的なのですが・・・・・レイン
先生の映る画面は、まるで空気が浄化されていくような感覚です。
容姿だけではなく、只々、その存在が美しい。
プレシャスの心の奥深くに眠る尊厳を、根気強い教育で呼び覚ま
していく過程は、本当に感動です。
予告編でも取りあげられていますが、全てに絶望したプレシャスに
語りかける、レイン先生のシーンはただ、涙、涙・・・。
このレイン先生、実は同性愛者なんです。
知的で心優しいパートナーと同棲しているのですが、これが理由
で、レイン先生自身も母親と疎遠になっているようです。
実の親に存在を否定される苦しみを、痛いほどわかっている人
です。
レイン先生がフリースクールの生徒たちに親身になるのも、それが
原動力となっているからなのでしょう。
教師は他人の痛みが分からないと務まらない職業だと、つくづく
思います。
様々な問題を抱えた生徒が通う、フリースクールの教師となれば
尚更でしょうね。
難しい職業ですが、とてもやり甲斐のある職業ですね。
そしてこの人にも注目です!
プレシャスを担当するソーシャルワーカーのミセス・ワイス
このミセス・ワイスを演じているのは誰だと思いますか?
とっても有名な人ですよ
そう、世界の歌姫!マライア・キャリーなんです!
どうですか・・・・殆どナチュラルメイクのマライアです。
誰かに言われなければ、気付けないレベルです。
マライアの演技も素晴らしかった。
この人は演技も十分に出来る人なんですね。
演技派の俳優陣の中でも、全く引けをとらない演技でした
まるで怪物の如く描写されている、プレシャスの母ですが、彼女
自身も夫からの虐待に苦しんでいた、被害者でもありました。
プレシャスを悪者にして虐待することで、自分が夫から受けた虐待
の理由付けをしているようにも思えました。
一人娘を愛したいと思う度に、自分がされた虐待を思い知り、痛め
つけられていたのでしょうか・・・。
この母親自身も地獄の中で、のたうち回っていたのです。
マライア演じるソーシャルワーカーとプレシャスとの面談シーンは
必見です!モニーク熱演です
・・・・・そしてプレシャスは決断します。
もうプレシャスには無償の愛を与えてくれる子供たちがいます。
彼女に手を差し伸べ、話に耳を傾けてくれるレイン先生や友達も
います。
地獄から抜け出すには、準備万端なのです
この作品は序盤から佳境にさしかかるまで、とても過酷な虐待
シーンの描写があります。
怖いし、観ていて辛い作品です。
でも、決してラストは辛いだけではないですよ。
沢山の大人の助けを得て、プレシャスは地獄から抜け出します。
つくづく、人間って傷つけあう生き物だと絶望したりもしますが、
傷ついた心を癒し合い、助け合うこともできるのが人間だと、思わ
せてくれるような作品です。
是非、日本の十代の子にも観て欲しい作品です
余談
今週の私はブログ更新率が優秀だな~・・・・
連休中に頑張って記事を仕上げたので
来週からはまた、ゆるゆる更新に戻りますけどね